登美男さん⑵
前の記事に次いで、登美男さんの思い出
私の転勤が決まり、彼が癌を発症。余命宣告を受けたこともあって
以前からメールアドレスを教えてほしいとの思いに応え
私のアドレスを伝えた
その後彼からは、
「元気ですか。風邪ひいてませんか」「台風は大丈夫だった」
等と私を気遣うメールが届いた
メッセージは短いけれど、どれだけの時間を要するかわかっていたので
ありがたく思った
それまで名字できていたメールが
ある時「ともちゃん、好きです」というメール
私はなんと返信したらいいのか、悩んだ
「ありがとう。私は、好奇心旺盛で 色んなことにチャレンジし どんなときも諦めない登美男さんを尊敬しています」
そう返信した
それからしばらくして、前任地のスタッフから連絡があった
「あんた登美男さんと結婚するんだって」
「えっ どういうこと」と私は驚いた
「登美男さんが、お母さんに結婚したい人がいる。彼女も良いって言ってくれたって話したの。相手は誰かって聞いたら、看護師だって。それでどの人かって家族が聞きに来たのよ。でも今はここにいないって言うから、あんたのことだなって思ってね」
「好きです」というメールが来たこと。「尊敬している」と返信したことを伝えた
その頃は、痛みもひどくなっていて モルヒネを使っていたから幻覚を見たんだろうと
そして、一週間後「今から登美男さんの面会に来られないか」という電話が入った
危篤状態にあり、私に会いたがっている
脈拍が下がるんだけど、私のことを話すと眼を開けて脈拍が戻るという
今日の勤務が終わり次第行くから、待っててと伝えた
が、間に合わなかった
それでも、姿あるうちに会っておきたくて 家族に連絡しご自宅に伺った
線香を上げ、お顔を見させてもらった
穏やかで、優しい顔だった
お母様から、「あなたでしたか。登美男が結婚したいって思った人は」
私は「そんな風に思っていただいて、もったいないです ありがとうございます」と
「登美男はこんな身体に生まれて、やりたいことも十分にできず、ましてや誰かを好きになるなんてことないと思ってた。それなのに、あなたのお陰で人を好きになり、恋をして、結婚したいとまで思えた。最後にそんな思いを持てて良かった。ありがとう」
涙が溢れた、止まらなかった
眠っている登美男さんに私は
「今度生まれてきたときは、一緒に散歩しようね。あなたのカメラで私を撮ってね。 いろんな事教えてくれてありがとう」
と声をかけ手を握らせてもらった
今でも時々、彼の笑顔を思い出す
彼に出会えたことは、私の一生の宝だ